『龍が如く8』吹き替えの舞台裏

Published: 2024年3月1日

『龍が如く8』吹き替えの舞台裏

龍が如く」は2005年に第一作目が発売して以来、多くの批評家から高い評価を得て商業的成功を収めている日本の有名なRPGシリーズです。日本では、このゲームは豪華な声優陣を起用していることで知られています。そのため、SEGAがシリーズ8作目となる最新作『龍が如く8』の中国語音声を追加すると発表したとき、このゲームは予想通り、中国のプレイヤーの間で大きな期待を集めることになりました。

こうして『龍が如く8』に吹き替え(VO)を提供するという重大な任務が、Side Shanghaiに課せられたのです。チームはキャスティングから収録、演出、プロジェクト管理、ポストプロダクションに至るまで、中国語吹き替えの全工程に携わりました。さらに、Sideに所属する我々のチームは、繁体字中国語と韓国語に加え、簡体字中国語のゲームスクリプトのために、さらなるローカライズローカライズQAを提供しました。

龍が如く」シリーズ初の中国語VOがどのように制作されたかを知るため、私たちはSide Shanghaiの主要メンバーと話し合い、そのプロセスについて学び、この特別なプロジェクトの準備に費やされたすべての時間と労力について掘り下げました。

 

龍が如く8』の収録にあたり、中国語声優のキャスティングはどのように決めたのですか?

龍が如く」シリーズには約9年にわたる歴史があります。出演する日本語声優の多くは、ゲーム業界やプレイヤーの間で尊敬される存在になっています。そのため、この仕事に最適な中国語声優を見つけることがまず簡単ではありませんでした。

龍が如く8』では、400人以上のキャラクターがボイス付きで登場します。ですが、そのうちの53人は、過去作に登場したキャラクターや新キャラクターなど、特にクオリティの高い声を必要とする特別なキャラクターです。何度もオーディションを重ね、84人のプロの声優を無事起用することができました。

最高の人材を起用するために、シリーズの過去作品をしっかりプレイし、各キャラクターのストーリーと背景を慎重に分析する徹底的な調査を行いました。各キャラクターの性格的特徴や、オリジナルの日本人声優の声質に基づき、特別なキャラクターに対しては3人ずつ候補をキャスティングしました。そして、サンプルを収録してSEGAに送り、最適な俳優が選ばれたのです。

例えば、難波悠のキャスティングには悩まされました。オリジナルの日本人声優は独特な声の持ち主だったからです。ゲーム内のキャラクターはくたびれた様子の中年男性だったため、最初は年配の俳優を何人か役に推薦しましたが、最終的にオリジナルの声優により近い声質を持つ若手俳優がSEGAチームによって選ばれました。それとは対照的に、メインキャラクターの春日一番と桐生一馬のキャスティングは非常にスムーズで、中国語俳優の声、性格、特徴が日本人声優の声とシームレスに一致したのです。

ゲーム内の複雑なキャラクターたちを考慮し、中国語の俳優をキャスティングする際には、第二外国語の能力も考慮に入れなければなりませんでした。英語が堪能、あるいは日本語と中国語の両方が堪能な声優を割り当てなくてはいけないキャラクターもいました。ゲームの言語バージョン間で言語が混ざり合っている部分もあります。例えば、「横浜流氓(はんぴんりゅうまん)」という中国人キャラクターが属する組織があります。こういったキャラクターから英語版と日本語版の両方で当社が収録したボイスを聞くことができます。

 

龍が如く8』の収録工程で興味深かったことや特筆すべきことはありましたか?

もちろんです。このゲームの重厚なストーリーには多くのキャラクター同士の交流が含まれています。皆さんは知らないかもしれませんが、各キャラクターの音声は別々に録音されました。声優たちがお互いリアルタイムでやり取りすることが無かったので、より複雑性が増してしまいました。例えば、ゲームに登場する最も重要な5人の主人公は、参考音声なしで一から収録され、他の声優たちの全体的なトーンの基準となりました。

一貫性を確保するため、俳優たちはオリジナルの日本語音声や中国語の収録音声を参照するだけでなく、他の登場人物のセリフの感情的な背景も研究しました。興味深い例を挙げるとすれば、宇多丸とソンヒのシーンの収録ですね。当初の収録スケジュールでは、ソンヒの声優が先に収録を済ませていました。収録陣はそれを知らず、その後の宇多丸の収録中にアドリブをたくさん入れました。ディレクターはより良い演出のためにそれらを残したかったんです。そのため、ソンヒ役の声優はスタジオに戻って再収録する必要がありました。

 

収録中に直面した最大の難関は何でしたか?

準備と調査も手こずりましたが、それは氷山の一角にすぎませんでした。最も大きな挑戦は、本物のローカライズを提供し、中国のプレイヤーに日本のVOでプレイした時と同じ感情を持ってもらうことでした。

特に、日本語と中国語の表現の違いから、言語間の音声同期が難しかったです。例えば、日本語は間投詞を連続で使用することが多いですが、中国語は多くの場合もっと簡素です。中国語と日本語のリズムと間も異なります。特に日本語では敬語を使えば文末が長くなりますし、特定の音節は通常より速く発音するものもあります。文の構造もかなり異なり、2つの言語間で文が逆転しているものもあります。そのため、台詞がオリジナルの音声にうまく合うように、台本と台詞を入念に推敲し、より完璧にする必要があったのです。声優たちにも、オリジナルの脚本に完璧に合わせるために、演技の要素を追加しなければなりませんでした。

一例として、ゲームに登場する日本語と中国語の音声台詞を比較してみましょう:

 

1. オリジナルの日本語:
まずは余計なことを考えずに打席に立ちな ホームランは後からついてくるさ

直訳:
まず、他のことは考えないこと。バッターボックスに立つだけでいい。後から自然にホームランが出るさ。

口語的な表現と行の長さに合わせたもの:
心を澄まして、そこに立て。そのうちホームランが打てるさ。

 

2. オリジナルの日本語:
アルツハイマーだそうだ。 57のはずなんだけどな。

直訳:
...彼女はアルツハイマーなんだ。彼女はまだ57歳だ。

語順を逆にしてより自然に:
まだ57歳なのに、アルツハイマーなんだ。

 

3. オリジナルの日本語:
お初にお目にかかります。 手前生国と発しまするはジャパンの東京・神室町。

直訳:
初めまして。東京の歌舞伎町からきました。

文脈に基づき、元の行の長さに合わせて翻訳:
どうも皆さま。ご機嫌麗しゅう。初めてお会いいたします、わたくし東京の歌舞伎町から参りました。

 

ありがたいことに、収録ディレクターとローカライゼーション・チームが協力してくれたおかげで、ローカライゼーションに関するどんな難題もすぐに打開することができました。

特に、当社独自のスクリプト管理プラグイン「Tracker」によって、チームは収録されたセリフを素早く探し出し、音声ファイルを再生することができ、いつでも正確かつ効率的に修正することができました。

 

龍が如く』はカラオケシーンが有名ですよね。これらのシーンも『龍が如く8』で吹き替えられたのですか?

 もちろん、カラオケのシーンは、中国語の音節を元の日本語の音節に対応させるのが大変だったとはいえ、制作プロセス全体の中でも特に気に入っている部分です。カラオケのローカライズに取り組むため、すべての楽曲のメロディー、歌詞、ブレイクを研究し、声優に参考用のデモ音源を提供しました。例えば、中国語のラップを日本語のビートに合わせる作業は時として面倒な作業でした。音節を一つ一つマークして中国語の文字を割り当て直す必要があったからです。そのため、ゲームの最終バージョンでは日本語の歌詞と中国語のVOが異なります。それに気づくプレイヤーもいるかもしれませんね。

 

音声制作以外にも、Sideのグローバルチームが提供する他のサービスについての連携についてもお聞かせください

 私たちが『龍が如く8』の中国語吹き替えを作成している間、ゲームのテキスト翻訳とローカライズQAも上海のチームに委託されていました。

通常、音声収録チームは音声に関する台本だけを受け取ります。そのため、あるシーンは提供されたセリフに基づいてのみ収録されたため、序盤でいくつかの問題が生じました。ですが、幸いなことに、翻訳チームの同僚たちが、不足している文脈について迅速にサポートしてくれました。彼らの多くは『龍が如く』シリーズの熱心なプレイヤーだったため、ゲームに関する多くの背景情報を詳しく説明してくれただけでなく、オリジナルの日本語吹き替えの厳しいタイミングに合わせるために、前もって中国語の台本を推敲するのにも協力してくれたのです。

またマレーシアの音声ポストプロダクション・チームにも心から感謝しています。収録は、カットシーンや細かい同期が必要なファイルなど、15のバッチに分けて行われました。各バッチは、特定の要件に従って、入念な検査、記録、保管が必要でした。バッチ処理では、ファイルの欠落や行の不一致などの問題が避けられません。幸いなことに、マレーシアのチームが優れたポストプロダクションサポートを提供してくれました。スプレッドシート、収録ソフトウェア、プラグインマクロが統合されたシステムにより、問題を迅速に特定し、解決策を見出し、正確性を確保することができました。

ローカライズVOの収録現場やこのプロジェクトに尽力したSide Shanghaiチームのメンバーについて知りたい場合は、下にある舞台裏の掘り下げ動画をご覧ください!

https://www.youtube.com/watch?v=_JrMeB3gSXQ

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