リメイク版『SILENT HILL 2』:名作ホラーの復活
「Silent Hill」シリーズは25年以上にわたり、サイコロジカルホラーの代名詞的存在として様々なゲーム、スピンオフ作品、映画、サウンドトラックに影響を与えてきました。2001年発売の『SILENT HILL 2』はホラーゲームの金字塔であり、2022年にはファン騒然のリメイク版が発表されました。
Bloober TeamがKONAMIと協力して開発したリメイク版『SILENT HILL 2』は2024年10月8日に発売され、現在では数百万本の売上を記録しています。リメイク版は亡き妻のメアリーから手紙を受け取った主人公、ジェームズ・サンダーランドがサイレントヒルを再び訪れるところから始まります。悪夢のようなクリーチャー

『SILENT HILL 2』(2024)のジェームズ・サンダーランド
ファンや批評家から広く称賛されている『SILENT HILL 2』(2024)はシリーズ史上最速で売れたタイトルです。Bloober TeamとKONAMIはこの名作を蘇らせ、オリジナル版の特徴ともいえる心理的な複雑性を保ちつつ、ゲームプレイ、音声、グラフィック、AIを強化することを目指しました。ですがこれを行うには、開発に協力してくれるパートナーが必要だったのです。Sideの共同開発チームにお声が掛かったのはこのタイミングでした。
読み進める前に… *警告:ここから先は『SILENT HILL 2』の重大なネタバレを含みます!*
SideがBloober Teamと緊密に連携し、共同開発したボス戦があります。社会に裏切られ、トラウマに囚われた青年エディー・ドンブラウスキーとの食肉冷凍室での戦いです。
開発プロセスの裏側に加えて、オリジナル版から逸脱しない作品づくりの過程や、高い没入感と緊張感でプレイヤーを引き込む手法についてご紹介します。
人の皮をかぶった怪物:エディー・ドンブラウスキー
エディー・ドンブラウスキーは『SILENT HILL 2』でジェームズが出会う心を病んだ人物です。彼らの対立は徐々にエスカレートしていき、最終的に2人はトルーカ刑務所の地下にある迷宮の食肉冷凍室で戦いますが、この場所にはエディーの錯乱した精神状態が反映されています。エディーとの出会いは罪悪感と心理的不安定性というテーマを深く掘り下げたもので、その後のボス戦も同じテーマに沿っています。
この重要な場面に関しては、アニメーションやAIの挙動、ステージの動作なども含め、Bloober Teamと協力して一から再設計しました。エディーとの戦いに取り組むにあたって、共同開発チームには"オリジナル版から逸脱せずにクオリティを高める"という明確な指示が与えられました。これはただの戦いではなく、プレイヤーとジェームズの精神に大きな影響をもたらす場面です。

『SILENT HILL 2』(2024年)のエディー・ドンブラウスキー
これまでに遭遇した悪夢のようなクリーチャーとは違い、エディーは生きている人間であり、プレイヤーは倫理的・感情的な一線を越えなくてはなりません。ジェームズというキャラクターは最初から最後まで罪悪感と抑圧に悩まされますが、序盤のほうでは道徳的な素振りを見せます。しかしエディーは自身の暴力衝動に完全に屈しており、ジェームズも道を誤ればこうなるということを表した存在です。
彼との戦いは激しくも不気味で、物語的に意味のあるものですが、オリジナル版にあった閉所恐怖症的な恐怖も失われてはいません。緊張感を高めつつプレイヤーの方向感覚を鈍らせるため、戦闘を3段階に分け、濃霧が漂う極寒の食肉冷凍室を作り上げました。
第1段階
第1段階ではエディーが動き回り、プレイヤーに休む暇を与えません。プレイヤーはぶら下がっている肉に身を隠し、リボルバーの弾を避けながらエディーを追い詰めていきます。

第2段階
第2段階ではエディーが蒸気パイプを撃ち、室内が霧に包まれるため攻撃をかわしづらくなります。照明が消えて霧も出るため、エディーの動きを読むには音に頼らざるを得ず、これが「SILENT HILL」特有の不安感を煽ります。エディーの行動も変化し、よりアグレッシブに接近して殴りかかってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=r__JIw76SlI
エディーのボス戦 - 第2段階の開始
第3段階
足元のベルトコンベアが作動します。予想外の動きが発生し、視界を遮られたうえに余計な物音まで鳴るため、エディーの動きがさらに読めなくなります。エディー自身も予測不可能な動きで果敢に攻めてくるため、音を頼りに位置を把握し続けなければなりません。この戦いで一番激しい部分はここですから、エディーを倒すまでは油断せずに回避と攻撃を繰り返す必要があります。
モーションキャプチャーによるリアリズムの向上
エディーの動きに臨場感と恐ろしさを与えるため、リメイク版ではモーションキャプチャー技術を使用しました。シニアアニメーションマネージャーのDevon Browneがキャプチャー役を担い、共同開発責任者Alejandro García-Tuñónがアクションを担当しました。リアリズムを高めるために小道具の銃も使用し、自然かつ重みのある威圧的な武器の動作を再現しています。
https://youtu.be/lmrZycu_23k
Sideの共同開発責任者、Alejandro García-Tuñónによるモーションキャプチャー

アクションをキャプチャーした後、アニメーションチームはUnreal EngineのControl Rigシステムでデータを洗練させ、ほぼリアルタイムでのイテレーションを可能にしました。これによって動きがより滑らかかつ予測不可能になり、エディーの不安定さが強化されました。
大まかに言えば、共同開発チームはリメイク版におけるエディーのキャラクターづくりやリアリズム向上の支援に回りました。エディーの妄想や絶望を色濃く反映したマップと余裕のない会話から、暴力衝動に飲まれていくエディーの姿が鮮明に描き出されます。
戦いが終わる頃には、ジェームズは人を殺すという倫理的な一線を越えてしまっているのです。この場面の余韻は戦闘終了後も続き、罪悪感や暴力というゲームのテーマに繋がります。結果的に、エディー・ドンブラウスキーの悲劇的な狂気への転落とその結末こそが、彼を本作屈指の印象的かつ不気味な人物たらしめているのです。キャラクターとしてはゲームに通底する「人間の心に潜む闇」というテーマを体現しています。
https://www.youtube.com/watch?v=GE0iFnG5W7Y
モーションキャプチャー – エディーの敗北
https://www.youtube.com/watch?v=9Z0pFkiC_kQ
最終シーケンス – エディーの敗北
「SILENT HILL」の精神を未来へ
Bloober Teamによるリメイク版制作を支援するにあたり、共同開発チームはオリジナル版に忠実かつ現代的な体験を実現するという明確な目標を掲げました。
最も重要なボス戦の一つであるエディー・ドンブラウスキーとの戦いを再構築することで、ゲームプレイ、アニメーション、AI、環境機能を強化し、新旧のプレイヤーにとって重要な場面のクオリティ向上に貢献しました。突き詰めて言えば、共同開発チームはオリジナル版の感情的な深みを保ちつつ、より重層的な緊張感、恐怖感、没入感のあるリメイク版『SILENT HILL 2』(2024)の制作を支援する役割を担ったのです。
共同開発チームにとって、このプロジェクトは人気シリーズに貢献するだけでなく、ゲーム開発を支援し、自社の技術を向上させ、未知の創造的難題に挑み、ホラーゲームの傑作を新しい世代に届けることを意味しました。
© Konami Digital Entertainment

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