ゲーム音楽へのチームアプローチとその魅力

Published: 2025年6月23日

Author: François-Xavier (FX) Dupas – ミュージック&サウンドクリエイティブディレクター、リードコンポーザー

ゲーム音楽へのチームアプローチとその魅力

Key Takeaways

  1. チームベースの作曲は創造性と士気を高めます。 グループで作業することで、多様な音楽的可能性が生まれ、スムーズなワークフローと活気に満ちたスタジオ文化が実現します。複数人の作曲者が即興しながら、アイデアを交換し、リアルタイムでお互いに影響を与え合うと、よりリッチでダイナミックなサウンドトラックが生まれます。
  2. コラボレーションには適切な環境が必要です。 Side Montrealのカスタムスタジオはリアルタイムのチーム作業用に設計されています。同期されたワークステーション、効率的なルーティング、そして300以上の楽器が揃っています。このインフラストラクチャにより、迅速に実験したり、タスク間でスムーズに移動したりできるほか、技術的な要因によるスローダウンを避けることができます。
  3. チームでの作曲が常に適切であるとは限りません。 複数人でのコラボレーションは素晴らしい創造性を引き出すことができますが、万能ではありません。時間が限られている場合、創造的な方向性が非常に具体的である場合など、音楽的ビジョンを1つにすることでメリットを受けられるプロジェクトもあります。重要なのは、プロジェクトの目的、タイムライン、トーンに適したアプローチを選択することです。

Side Montrealをはじめとする当社のオーディオチームは、すべてのチームメンバーが共通して音楽への情熱を持っています。

私たちのチームの中心には、ゲーム音楽に特化した6人のプロ作曲者のグループがいます。しかしそれだけでなく、プロジェクトマネージャーからサウンドデザイナー、マネージャーに至るまで、20人のスタジオチームのほぼすべてのメンバーが、歌唱、演奏、または制作など、独自の音楽的背景を持っています。

専門知識を共有し、全員が専用スタジオで一緒に作業することで、コラボレーション、即興、イノベーションが醸成される環境を作り出します。そして、このコラボレーションを活用する方法の一つが、チームベースの作曲です。

今日においては、複数人が関わったコラボレーションでゲーム音楽が製作されることが普通です。これは特に、『ELDEN RING』やスター・ウォーズ 無法者たちのような大規模なタイトルに当てはまります。必要とされる曲数が膨大なため、チームワークが不可欠となっています。映画の世界でも、トップクレジットとして名前が載るのはJohn WilliamsやHans Zimmerのような象徴的作曲家ですが、その舞台裏では実際に曲を収録するまでに、オーケストレーター、アシスタント、追加のクリエイティブスタッフなど、大規模なサポートチームが関わっているのです。

しかし、私たちのチーム作曲モデルを際立たせているのは、階層がフラットであることと流動的なコラボレーションです。私たちはの作曲手法は、スコアリングハウスよりもバンドに近いのです。スタジオは目的に合わせて設計されていますので、リアルタイムでジャムセッションを行い、アイデアを交換し、試行錯誤を重ねることができます。

作曲へのアプローチをより良くしたいとお考えなら、次の項目でチームベースのアプローチでメリットを生み出す方法、スタジオ環境を育むためのヒント、避けるべきよくある落とし穴、そしてベストプラクティスをご紹介しています。ぜひ次のサウンドトラック制作でお役立てください。

なぜチームで作曲するのか?  

共同作曲とは、ゲームのサウンドトラックを複数のミュージシャンや作曲者が共に創り上げることを意味します。 ゲーム開発においてこのアプローチが特に効果的である理由には、以下のようなものがあります。

さらに、コラボレーションは充実感を与えるだけでなく、効果的でもあります。最近の研究によると、協力的な作業に従事する従業員のうち73%がパフォーマンスの向上を報告しており、60%がそれがイノベーションを促進すると述べています。

しかし、最も重要なのは、それが単に楽しいということです。音楽は共有体験といえるものです。ジャムセッション、リフ、実験を一緒に行うことで、この基本的な事実を再確認することができます。

コラボレーションのためのスタジオ設計 

チーム構成には多くの利点があることは明らかですが、その実現には何が必要でしょうか?当社の経験上、コラボレーションに最適な雰囲気を育む上で、大きな違いを生み出すのは作業空間であるということが分かっています。

物理的インフラストラクチャ

新型コロナウイルスのパンデミック中の体験は、現在のチームベースのワークフローを形成し始める上で決定的な転換点となりました。

ロックダウン中、多くのスタジオがリモートワークに移行する中、私たちのチームは以前よりも広いスタジオスペースをお得な価格で確保し、夢のクリエイティブ環境をついに作り上げられる機会を得ました。物理的なスペースのあらゆる側面をコラボレーションのために設計し、文字通り壁を壊して最適な環境を構築。新しいカスタムスタジオをゼロから慎重に設計したのです。

その結果、8人までの演奏者を収容できるライブルームを含む3つの収録室、専用のミキシングルーム、そして300以上の楽器を備えた施設が完成しました。レイアウトでは、ワークフローを効率化するために音楽、サウンドデザイン、管理のエリアを分割しています。

個別の部屋を超えてこれらそれぞれの創造的空間を移動促進するような設計のスタジオで、チームが効率的にタスクを切り替え、勢いを失うことなく作業を進めることができます。

そして、対面での業務に戻る時が来たとき、チームを説得する必要はありませんでした。以前はもっと狭い空間で働いていましたが、スタジオに再びフルパワーで帰還したことで、ゲームミュージックとサウンドを一緒に作り出すことから得られる、新しいかけがえのないエネルギーを発揮できるようになりました。

技術インフラストラクチャ

チームメンバー間のシームレスなコラボレーションを可能にするためには、物理的な空間と同様に、デジタルなインフラストラクチャを慎重に設計することが重要です。

私たちのスタジオでは、すべての音楽製作用コンピューターが同一のハードウェアと同一のプラグインライブラリで構成されており、完全なクローンとして統一されています。そのため、どのセッションも互換性の問題なく任意のマシンで開くことができるのです。

すべてのプロジェクトファイルは中央サーバーに保存され、高速ローカルネットワークを介してアクセスできます。そのため、どのワークステーションを使用しても、ローカルドライブで作業しているような効率的なパフォーマンスが得られます。さらに、各部屋には事前にマイクが設置され、施設全体で簡単にルーティングできます。シンセサイザーの録音、ドラムの収録、弦楽器のトラッキングを行う際、すべてが最小限のセットアップ時間で創造的な瞬間を捉える準備がすでに整っているのです。

この充実したインフラストラクチャにより、流動的な創造性が他に例のないレベルにまで開放されます。1人の作曲者がある部屋でトラックを作り始めたら、別の部屋に移動してシンセサイザーを収録し、チームメイトに渡してパーカッションを追加し、その後は戻ってオーケストレーションを洗練させるといった具合です。この時、ファイルをエクスポートしたりドライブを渡したりする必要はありません。リアルタイムで全員がクリエイティブなプロセスに貢献し、容易に互いの作業の構成に関与できるのです。

チームでの作曲の課題 

共同制作には独自の課題が伴いますが、適切なシステムを揃え、価値観を共有できていれば、それらの課題はプロセスの一部とすることができます。

技術的な課題

スムーズな製作のために、運営にあたっていくつか重要な選択を行いました。

主な制約の1つに、プラグインライブラリを少なく保つことがあります。すべてのワークステーションがクローンであるため、ソフトウェアはすべてのシステムにインストールおよびライセンスされている必要があるのです。このため、プラグインを1つ購入するだけでもコストの急上昇は避けられません。設備と予算のバランスをとるため、当社ではサブスクリプションベースのモデルを多用しています。外部からの協力者を迎える際には柔軟にスケールアップ・ダウンが可能です。

また、すべてを統一して同期させられるよう、毎月のアップデートを実施しています。システムはすべて同時に更新され、バージョンの競合や互換性の問題を防ぎます。プラグインは依然として重要な役割を果たしていますが、徐々にハードウェアや生楽器に頼る場面も増えてきています。これによりソフトウェア依存が軽減され、触覚的な音のコントロールの幅が広がるのです。

クリエイティブの原動力のマネジメント

どんなアーティストとも同じように、強い創造的な色を持つ作曲者もいます。自分の創造的なビジョンが他人の手で変えられたと感じると、緊張が生じることがあるのです。作曲者が全員チームワークを楽しめたり、成功できたりするわけではありません。そのため、協力する相手は適切に選ばなければなりません。

これまでに私たちは、高い基準と共感をバランスよく保ちながら、前向きな雰囲気を育む方法を身に着けてきました。それは、オープンな対話と建設的な批評を推奨することです。このような原動力の舵取りをするのは難しいことですが、うまく行えば、チーム内の絆を強化し、音楽をより良いものにできます。

創造的な柔軟性、技術的な一貫性、そして強いチームとしての原動力は、チーム内の同期システムと協力的な絆の維持に必要な追加の時間と努力とのトレードオフになります。それでも、私たちが得る利益は労力をはるかに上回るのです。

チームでの作曲が適さない場合

共同作曲には独自の利点がありますが、それが常に最良のアプローチであるとは限らないことを認識しなければなりません。チーム作曲には、より多くの時間、調整、計画が必要となり、作曲者を部屋に集めて魔法が起こることを期待するだけというのは甘い考えです。プロジェクトが小規模な時や締め切りが厳しい場合、共同制作にかける労力はあまり価値を生まないかもしれません。

プロジェクトに求められる音楽的な色や世界観が限定的な場合は、1人での作曲が効果的といえるでしょう。1つのスタイルにピンポイントで焦点を当てたものが求められるなら、1人の作曲者が一貫してビジョンを展開したほうが、創造的に実験をするよりも適しているかもしれません。

重要なのは、プロジェクトのスコープに作曲のアプローチを一致させることです。時には、音楽に求められるのは1人の冴えた才能だけであることもあるのです。

チームベース作曲のベストプラクティス

これまでの時間をかけて、コラボレーションのエンジンがスムーズに動くよう、ベストプラクティスを開発しています。

事例:『Squid Game Virtuals

最近手掛けた音楽プロジェクトのハイライトの1つに、Netflixの大人気ドラマ『イカゲーム』のVR版で、Sandbox VRのチームと共に取り組んだSquid Game Virtualsがあります。原作シリーズのサウンドトラックは独特で不協和音的、そして意図的に不安を煽るものです。しかし、ゲームにするにあたって、その独特な奇妙さを保ちつつ、楽しく、デジタルで、エネルギッシュである必要がありました。

この微妙なバランスを描くため、私たちはジャムセッションベースのワークフローを採用しています。カスタムのテクスチャを作り上げるため、以下のような方法をとりました。

結果として、原作の不安感とゲームの遊び心の両方を捉えたハイブリッドなサウンドスケープとなりました。ライブ実験と共同的な創造性を通じて構築することができたのです。作曲者1人で同じ曲が製作できた可能性もありますが、共同作業はより迅速で楽しく、多くの幸運な偶然や予期しないアイデアに恵まれました。こちらをご覧ください

https://www.youtube.com/watch?v=Uapov4XoCzE

今後の展望:継続的な改善

私たちは共同作曲のアプローチを拡大し進化させ続けていきます。オフィスの設備やプロダクションのプロセスは、今後2年間で完全に別物になる可能性もあります。特に、絶え間なく変化するゲーム業界の状況で、迅速な適応が重要となります。

現在私たちは、音楽、サウンドデザイン、ボイスプロダクションチーム間の部門横断的なコラボレーションを増やす余地があると考えています。特に、これらのサービスをグローバルに拡大する中で、Sideでの取り組みを進めています。例えば、音楽のテクスチャをサウンドエフェクトと革新的な方法で融合させることができるでしょう。私たちが取り組んだプロジェクト、SEASON: A letter to the futureでは、音声の録音がゲームプレイの中心的な要素となりました。

また、外部の作曲者とのリモートフレンドリーなセットアップを模索しています。ミラーリングされたワークステーションやParsecのようなツールを使用して、必要に応じて物理的なスペースを超えたコラボレーションモデルを拡張できるでしょう。

もう一つの焦点は、より広範なオーディオパイプラインに、音楽デザインと実装を緊密に統合することです。私たちの独自の創造的・技術的スキルの組み合わせで、ゲーム開発プロセスにより早い段階で、より包括的に音楽を取り入れることができるでしょう。

私たちやチームの他のメンバーにとって、ツールやプロセスがどのように進化しても、使命はシンプルです。素晴らしい音楽を、一緒に作りましょう。

 

プロジェクトで創造的なパートナーをお探しなら、ぜひコラボレーションしましょう。まさに私たちの得意分野です!

 

私たちの最新プロジェクトについては、以下のミュージックリールをご覧ください。

 

https://www.youtube.com/watch?v=JUtub8HjKao

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