『Clair Obscur: Expedition 33』音声収録の裏側に迫る

Published: 2026年3月19日

『Clair Obscur: Expedition 33』音声収録の裏側に迫る

Key Takeaways

  1. 適切な環境が最高の演技を引き出す: 快適でサポートの行き届いた収録環境を整えることで、声優は力強い演技に必要な繊細さを引き出せるようになります。特に感情的な負荷の高いシーンでは、その重要性は一層際立ちます。
  2. 素晴らしいキャスティングは明確なクリエイティブビジョンから始まる: 明確なビジョンを持ち、演者候補をよく理解している経験豊富なキャスティングディレクターは、キャラクターにふさわしいセンスやトーン、そして感情表現の幅の持ち主を見極めることができます。プロセス全体を通じて強力なディレクションが行われることで、その力は一層発揮されます。
  3. AAAの品質は予算からだけでなく、プロセスから生まれる: インディー系やAAのスタジオでも、制作過程における徹底した準備、戦略的なキャスティング、明確なコミュニケーション、そして慎重なパートナーシップを組み合わせることで、トップレベルと競い合うことが可能になります。

AAAスタジオからもインディー系スタジオからも、ほぼ途切れることなくゲームがリリースされています。その中には強い印象を残すものもあれば、静かに忘れられていくものも。  

ですが時折、私たちの予想を完全に覆してしまうゲームが現れます。そのひとつが、『Clair Obscur: Expedition 33』です。このゲームはリリース以来500万本以上を売り上げ、The Game Awards史上最多の受賞歴を持つゲームとなり、記録を打ち立てました。 

世界を熱狂させるゲームを作るには、一体何が必要なのでしょうか?  

大胆でクリエイティブなビジョン、自分たちのゲームに情熱を注ぐエキスパートたち、そして細部への徹底したこだわり。これらはいずれも欠かせない要素ですが、同様に適切なパートナーシップも不可欠です。 

マエル、ギュスターヴ、ヴェルソなど、『Clair Obscur: Expedition 33』のすべてのクルーの声に命を吹き込むにあたり、Sandfall InteractiveとKepler Interactiveは英語版の音声収録をSideに依頼しました。  

キャスティング、ディレクション、収録、そしてポストプロダクションに至るまで、当社のロンドンスタジオはあらゆる面をサポートしました。目指したのは、制作のすべての要素をプロジェクト独自のクリエイティブおよび技術的ビジョンに確実に沿わせること、そして、クリアした後も長くプレイヤーの心に残り続ける、エモーショナルなパフォーマンスを届けること。  

このビジョンの実現に当社はどう貢献したのか――ぜひ続きをお読みください。 

素晴らしいパフォーマンスのための基盤作り 

Sandfallチームは、初めて当社を訪れた時点で非常に綿密な準備を整えており、キャラクターの詳細なバイオグラフィーや背景資料、ムービーシーンのスクリプト、映像、また起用を希望する著名な声優まで、すべてを事前に共有してくれました。最初に現場に入ったのは、当社のプロダクションマネージャーであり、SandfallとSide London音声チームとの橋渡し役を務めたVeronica Gonzalezです。 

VeronicaはSandfallチームと連携しながら、常に電話や進捗報告に対応できる体制を整え、すべてをつなぐ接着剤のような存在となって最初から最後までプロジェクトを動かし続け、この協業を最終的に成功へと導きました。また、プリプロダクションチームも柔軟なスケジュール調整を行い、タイトな進行に対応するだけでなく、必要に応じて短期間でのセッション準備にも応じました。  

ディレクションの観点でいうと、このプロジェクトがストーリーを伝えるために、感情を強く揺さぶるパフォーマンスを必要としていることは明らかでした。キャストが比較的少人数だったため、どの役柄も重要で、ひとりひとりのキャラクターが物語のなかで非常に大きな役割を担っていました。そこでSandfallは、ビジョンの共通理解を確立し、制作全体を導くコミュニケーションの枠組みを構築するために、経験豊かなパフォーマンスディレクター、Joanna Greenを起用しました。  

Sandfallの詳細なブリーフィングも、当社のキャスティングディレクターであるVictoria Howardがゲームの世界観をしっかりと理解し、後に業界に旋風を巻き起こすことになるキャスティングプロセスをサポートする上で大きな助けとなりました。 

相性を重視したキャスティング

Sandfallのビジョンが確立され、主要な役にCharlie Cox(ギュスターヴ役)やAndy Serkis(ルノワール役)といった有名声優を確保できたことで、残りのキャラクターのキャスティングが始まりました。  

選ばれたキャストには、実績あるベテランゲーム声優であるBen Starr(ヴェルソ役、代表作は『ファイナルファンタジーXVI』のクライヴ・ロズフィールド役)や、Jennifer English(マエル役、代表作は『バルダーズ・ゲート3』のシャドウハート役)が名を連ねています。いずれも確かな実績を持ち、熱心なファンに支持される声優です。 

しかし、当社のキャスティングディレクターは、収録ブースでの経験だけを見ていたわけではありません。Joannaがゲームへの出演経験がやや少ない声優たちをサポートする指導体制を整えてくれたことで、重視されたのは「それぞれの役に最適な声優を見つけること」でした。  

たとえば主要キャラのひとりであるルネを演じたKirsty Riderは、『Clair Obscur: Expedition 33』の前に収録したゲームは1作だけでしたが、その経験と幅広い演技力から、誰もが彼女こそ適任だと確信していました。Kirstyの演技はその後『Clair Obscur: Expedition 33』のファンダムのお気に入りのひとつとなり、2026年のBAFTA Games Awardsで助演賞にノミネートされることになります。Rich Keeble (モノコ役)も素晴らしい追加キャストのひとりでした。Victoriaは早い段階で、Richがモノコ役にぴったりだと確信して候補に加えており、その結果、Richもまた2026年のBAFTA Games Awardsの最終候補に名を連ねることになりました。 

https://www.youtube.com/watch?v=RxKnW9PuS-M

Side Londonの舞台裏:『Clair Obscur: Expedition 33』の収録風景 

崩壊の危機に瀕する世界の収録 - *ネタバレ注意!* 

私たちが命を吹き込もうとしていた世界を考えれば必然のことですが、『Clair Obscur: Expedition 33』の収録では技術的正確性と感情の細やかさの両方が求められました。 

本作の舞台はベル・エポック期のフランスにインスパイアされたダークファンタジーの世界です。そこでは主要な敵である「ペイントレス」が年に一度目覚め、徐々に小さくなっていく呪いの数字を描いて、その年齢にある人々をすべて消し去ってしまいます。  

こうして始まるのが、謎と脅威、そして恐怖と絶え間ない危険に満ちた大地を巡る過酷な旅です。物語は、トラウマや喪失、そして大切な人が無残に失われていくのを目の当たりにし続けることで生じる心理的な負担と、真っ向から向き合います。ゲーム中には、そうした感情の重さをしっかりと支える演技が求められる、生々しく強烈なシーンが数多くあります。 

『Clair Obscur: Expedition 33』の舞台、ルミエール 

一部のシーンには特別な配慮が必要でした。たとえば、ソフィーというキャラクター(声:Billie Fulford-Brown)のゴマージュの場面は、胸が張り裂けるような瞬間でしたし、ギュスターヴの死に対するマエルの反応には、むき出しの感情が求められました。また、シエル(声:Shala Nyx)が自身の暗い過去を打ち明ける場面では、感情の脆さが求められました。それぞれの収録において、声優は深く、難しい感情を引き出す必要があったのです。 

Sideが重視したのは、適切な環境を整えることでした。声優たちが安心し、サポートされていると感じられるよう配慮し、感情を急かしたり無理に引き出したりすることなく、自然な演技を発揮できる環境を整えました。 

『Clair Obscur: Expedition 33』のソフィーとギュスターヴ 

信頼できるスタッフや適切なツールの存在も、制作に大きな影響を与えることがあります。プロジェクト全体で一貫して同じ2人のエンジニアと作業したことで、Sandfallは毎回すぐに希望するワークフローを進めることができました。  

また、専用のワークスペース、モニター、全関係者用の電源プラグを備えた録音ブースを当社が提供したおかげで、Sandfallチームの全員がスタジオ内で場所を取り合うことなく、作業に集中し続けることができたと、リードライター兼音声&ローカライズプロデューサーのJennifer Svedberg-Yen は言います。  

さらにSandfallの高度なリップシンク技術のおかげで、声優たちは通常のゲームの収録でよくある「厳密に決められたタイミング」に合わせた演技ではなく、より自由度の高い演技が可能になりました。その結果、シーンや感情にふさわしい形でセリフを表現できたのです。 

ポストプロダクションの段階でも、ゲーム特有の雰囲気を活かすための選択が行われました。多くのゲームでは、セリフを読む前に自然に出る小さな息づかいなどの「プレライフ」と呼ばれる音を取り除きますが、『Clair Obscur: Expedition 33』において、SandfallとSideはあえて別のアプローチをとりました。こうした自然な息づかいを残すことで、繊細で感情豊かなシーンの数々において、演技の親密さとリアリティがいっそう強化されたのです。  

世界的な評価を獲得した大ヒット作 

『Clair Obscur: Expedition 33』は2025年に発売されると、瞬く間に社会現象となり、Game of the Yearの有力候補に躍り出て、批評家から高い評価を受けるとともに、熱狂的なファン層を獲得しました。  

そして期待をさらに大きく上回り、数々の記録を塗り替えるとともに、パフォーマンス部門を含む主要アワードで数十もの受賞を果たしました。Jennifer EnglishはThe Game Awards 2025でBest Performance(最優秀演技賞)を、Golden Joystick AwardsでBest Lead Performer(最優秀主演パフォーマー賞)を受賞しました。また、ヴェルソ役のBen StarrもBest Supporting Performer(最優秀助演パフォーマー賞)を受賞しています。 

『Clair Obscur: Expedition 33』のマエル役、Jennifer English 

『Clair Obscur: Expedition 33』のヴェルソ役、Ben Starr 

発売当初から、多くの批評家がこのゲームの成功を決定づけた要素として、特にボイスパフォーマンスを挙げていました。 

「有名キャストによる完璧な演技とボイスパフォーマンス、そして、まるで現実の会話のように自然に展開する脚本とシーンの演出は賞賛されるべき点が多い。小さな仕草、繊細な表情、セリフの抑揚といった要素が、物語を幻想的でありながら現実味のあるものにしている」  

–  IGN 

『Clair Obscur: Expedition 33』はSandfall Interactiveの華々しいデビュー作。巧妙で魅力的なターン制バトル、完璧なアートディレクション、そして長編映画に匹敵するボイスパフォーマンスにあふれている。その結果、素晴らしいゲームの芸術作品が誕生した」  

–  GamingNexus 

Side、Sandfall、そしてKeplerの協業は、強力なパートナーシップ、明確なコミュニケーション、そして野心的なクリエイティブビジョンを形にするという共通の姿勢によって、インディー系スタジオでもAAAクラスの音声制作クオリティを実現できることを示しています。 

パートナーシップの実践 

『Clair Obscur: Expedition 33』の成功は、制作のあらゆる工程が信頼とオープンな協業を基盤に進められたとき、何が生まれるのかを示す証となっています。また、SandfallとKeplerは業界の一般的な慣習を超え、収録前後の重要なタイミングでキャストとスタッフを一堂に集めることで、真の信頼関係とケミストリーを醸成しました。こうした取り組みが、画面に映るパフォーマンスにも反映されています。  

Sideでは、すべてのプロジェクトにおいてこうしたクリエイティブなパートナーシップを築くことを目指しています。それはスタジオと声優が十分にサポートされ、入念なプロセスによってパフォーマンスが高められ、野心的なビジョンが確かな「声」を得られるような関係です。 

この特別なプロジェクトに力を合わせて取り組む機会を与えてくださったSandfall InteractiveとKepler Interactiveに、心より感謝申し上げます。 

当社の音声収録サービスの全体像についてさらに詳しく知りたい場合は、ぜひお気軽にご連絡ください 

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