ビデオゲームの開発には、才能、時間のみならず、ほとんどのチームが単独で管理できる以上の多くの要素が求められます。そのため、大半のゲームスタジオが最終的にアウトソーシングを利用することになりますが、それをうまく活かすには、想像以上に多くの準備が必要です。
GDC Festival of Gaming 2026にて、Sideの音楽・サウンド部門シニアディレクターであるMathieu Lavoieは、XDS (Sam Carlisle)、Behaviour Interactive (Amelie Meunier)、Bloober Team (Maciej Glomb)、およびVirtuos (Matthew Schulz) のリーダーたちとともに、成功につながるパートナーシップと、いつの間にか時間とやコスト、信頼関係を消耗してしまう関係とを分ける要因について議論しました。
以下に、彼らが共有してくれたアウトソーシングを成功させる方法と、失敗した場合に起こることについて重要なポイントをまとめました。

アウトソーシングをする理由
スタジオは通常、人員不足を補ったり、制作量の急増に対応したりするために、アウトソーシングを利用します。しかし最高の状態を作り上げれば、それ以上の役割を果たします。チームの運営を3つの重要な側面から強化してくれるのです。
1. リスクの軽減:変動性の管理
ゲーム開発が直線的に進むことは滅多にありません。ほとんどのスタジオは中核となる社内チームを持ち、特定のフェーズで規模を拡大し、完了すると再び規模を縮小します。外部パートナーの存在により、継続的な採用や組織再編の手間をかけずに、そうした柔軟な対応が可能になります。
しかし、その柔軟性が機能するのは、両者の関係が適切に保たれている場合のみです。予算が極端に削減されたり、単価を上げるために業務範囲を縮小しても、ひっ迫した状況が改善するわけではありません。結果的にしわ寄せがベンダーに起こり、後になって品質の低下や信頼の喪失という形で影響が現れます。
アウトソーシングによってリスクを軽減することは可能ですが、そのリスクが単にパートナーに転嫁されるだけでは意味がありません。事前の明確な期待値を決め、現実的な業務範囲を設定することで、双方にとってより良い結果をもたらします。
2. 持続可能性:チームの保護
持続的な制作現場へのプレッシャーは、スタジオが直面する最大の課題の1つです。社内チームのみで業務量の急増に対処するよう期待されている場合、燃え尽き症候群を避けるのは難しくなります。
計画的な外部サポートは安全弁として機能します。これによりチームは常にエスカレーションせずにピーク期に対応できる余裕を持つことができ、開発の負担が大きい時期に心理的な安心感が生まれます。
タイミングも重要です。チームがすでに疲弊しているタイミングでサポートを導入しても、負担を軽減するどころか複雑さを増してしまう可能性があります。アウトソーシングは、健康保険のように扱うのが最適です。必要になる前に準備しておき、いざという時に利用できるとチームが分かっている状態にしておくのです。
3. スキルセットの拡張:能力の強化
現代のゲーム開発はあまりにも多くの分野にまたがっているため、一つのチームがすべてにおいて卓越した能力を発揮することは不可能です。外部パートナーを利用することで、社内で専門知識を構築するのに必要なコストや時間をかけずに、その知識を利用できるようになります。
しかし、最も強固なパートナーシップは、単に要件を実行するだけにとどまりません。知識を伝達する機会を生み出し、契約終了後もチームにはその知識や新しいアプローチ、ツール、働き方が残り続けるのです。
ただし、アウトソーシングへの依存にはリスクも伴います。責任が過度に外部にへ移ってしまうと、内部の成長が停滞する可能性があります。目的は内部チームの能力を置き換えることではなく、チームの力を増幅させることです。
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うまく機能させる方法
まず、アウトソーシングに頼る理由を知ることはその一つです。ですが、実際にアウトソーシングがうまく機能するかどうかは、パートナーシップの構築方法と管理方法にかかっています。
状況がひっ迫する前に計画する
アウトソーシングの決定は多くの場合、期限が迫り、チームがすでにひっ迫しているときに遅れて行われます。しかしその段階では、選択肢は限られてしまいます。
現在進行中の課題だけでなく、全体を見て事前にニーズを挙げておくこと。その準備こそが後に影響してくるのです。そうすることでスタジオは時間に余裕を持って、業務範囲を適切に決めたり適切なパートナーを選択したり、それらを効果的に統合できるようになります。
特に運営型のゲームにおいては、外部開発の方針は最初からタイトルの開発計画と並行して検討されるべきです。
成功の姿を定義する
開始時点での目標の明確化が、その後のパートナーシップの成否を左右します。短期的なサポートか長期的なコラボレーションか、スタッフの増員か制作の完全な請負か。必要となるものを具体的にしてください。これは、パートナーの選定から契約形態に至るまで、あらゆる要素を形作ります。
プロジェクトブリーフを作成する際には、数値で測れる成果物と具体的な例を挙げて、成功基準を定義する必要があります。ブリーフが正確であればあるほど、パートナーはそれに応じた成果を出しやすくなるでしょう。
適切なパートナーを見つける
最高のパートナーとは、自社のチームの鏡となるのではなく、チームを補完する存在であるといえます。自社にない専門知識と、制作手法に合った作業モデルを探しましょう。
その際、それぞれの役割と責任は早めに定義するのが肝心です。誰が意思決定権を持つか、エスカレーションが必要なのは何か、そして何が独立して進められるかを明確にします。
単にブリーフに従って納品するだけでなく、共に何かを作り上げている意識を持てるチームは、より高いレベルでパフォーマンスを発揮する傾向があります。

オンボーディングがペースを決める
適切なパートナーと手を組み、ブリーフが整っていても、オンボーディングが不十分だと進捗が滞る可能性があります。
焦点を当てるべき領域は次の3つです。
- インフラ:ツール、アクセス権、ドキュメントは、作業を開始する前に準備しておく必要があります。
- 調整:キックオフの際に、目標、ワークフロー、コミュニケーションを明確化しましょう。
- 統合:外部チームを既存のパイプラインに組み込みましょう。この時、双方で明確な責任者を設定します。
完璧よりも早期のコミュニケーション
アウトソーシングのパートナーシップにおいて発生する問題の大部分は、コミュニケーション不足からではなく、発生のタイミングから生じます。問題の提起が遅れると、修正が煩雑化します。
完全な情報が揃うのを待つよりも、定期的な情報共有や一貫したフィードバックループ、そして透明性の方が重要です。この時のフィードバックは双方向であるべきです。外部パートナーが、プロセスに対して価値ある視点を提供してくれることも少なくありません。
また、多様な地域やタイムゾーンをまたいで作業する場合、コミュニケーションがさらに複雑になることにも留意しましょう。フィードバックは直接的かつ即座に行われる文化圏があります。しかし、コミュニケーションが慎重に行われたり、解決策が提案されて初めて問題が提起されたりする文化圏もあるのです。そのため沈黙していると、本当は合意していない場合でも合意していると誤解されがちです。
効果的なコラボレーションには、そうした違いに適応することが不可欠です。事前にコミュニケーションの期待値を明確に設定し、早期のエスカレーションを促し、時間をかけて一緒に働く多様な文化の規範を理解することで、長期的には多くの誤解を防げます。
意見のすり合わせは社内から
最もよくある失敗の原因の1つは、ベンダーとは全く関係のないところにあります。
社内のチームは多くの場合、委託範囲、予算、制約など、合意された内容を把握していないことが多いのです。そのギャップが非現実的な期待を生み出します。その結果、要望は蓄積し、反復作業は増加し、予算は計画よりも早く底をつくことになるのです。
その結果生じる摩擦は、パートナーが契約通りに正確に納品している場合であっても、外部へと向けられます。
これを回避するには、社内での認識を明確化しておかなければなりません。
- 何が購入され、予算がどのように使用されているかを、チームが確実に理解できるようにする
- リクエストを一元化し、範囲をアクティブに管理する
- 作業の完了時期を把握し、過剰な反復作業を避ける
- トレードオフを想定して計画を立て、すべてが最終成果物に残るわけではないことを受け入れる
アウトソーシングの失敗は、外部での実行上の問題である前に、内部における認識のすり合わせに起因することも多いのです。

ケーススタディ:リメイク版『Silent Hill 2』
Bloober Teamによるリメイク版『Silent Hill 2』でのアウトソーシング事例から、前提条件が実践においてどのように崩れ去るか、そしてチームがそこから何を学んだのかをご覧ください。
初めてのhttps://side.inc/lab/bringing-epic-boss-battle-to-life-silent-hill-2大規模なアウトソーシングの取り組みであったため、チームは予算承認が制約になると予想し、当初は範囲が厳密に定められた自己完結型のタスクに焦点を当てていました。実際には、社内の人員よりも外部予算の方が確保しやすかったため、結果的にチームの課題はアウトソーシングが最も大きな効果を発揮する領域を特定することへと移行しました。
さらに重要なことに、制作が始まると初期の前提の多くが成り立たないことが明らかになりました。
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前提 |
実際 |
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アウトソーシングチームを可能な限り組み込みたい。
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ドキュメントの不足により、多くの非効率が生じた。 |
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要求した通りのものを受け取れると想定している。 |
コミュニケーションの制限によって、しばしば望ましくない結果を招いた。
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こちらが設定したマイルストーンに収まると想定する。 |
多くの場合、オンボーディングの猶予を設けていなかった。
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うまくいくはずだ。 |
うまくいかなかった。 |
その後の調整と得られた教訓で、大きな違いが生まれました。
- 予算と制約については率直に伝える
- 協力関係に基づき、アウトソーシングのニーズを早期に特定する
- パートナーをチームに組み込む。ただし、適切なドキュメントでサポートする
- オンボーディングを優先し、パートナーが自律的に作業できるツールを提供する
- 誰かと波長が合わなくても大丈夫だと知る(お互い様)
ここから得られる教訓は、アウトソーシングが予測不能だということではありません。生じた摩擦の大部分は、推測が行われたのが早すぎたことと、それを十分に早く見直さなかったことから生じているということです。

最初から正しく構築する
アウトソーシングは予算や人材、品質、文化など、ゲーム制作のあらゆる部分に影響を与える設計上の選択となります。
うまく機能すればスタジオはより盤石になり、能力が向上し、成果物を提供する体制が整います。しかし一方でうまく機能しない時、その理由は人材の問題であることはほとんどなく、むしろ構造的な問題に起因します。パートナーシップがどのように計画されたか、チームがどのようにオンボーディングされたか、コミュニケーションの管理はどうか、全員が同じ認識で作業していたかどうかという問題です。
その構造を正しく構築することが、リソースを浪費するパートナーシップと、成果を上げるパートナーシップの分水嶺となるでしょう。
Sideでは、30年以上にわたり、あらゆる規模の開発者やパブリッシャーと協力し、長期的なパートナーシップを築き、彼らのビジョンを実現するお手伝いをしてきました。
もし次のプロジェクトで、物事を順序良く進められるパートナーをお探しなら、ぜひご連絡ください。